最近観た試合で、前半終了間際に第4の審判が掲げたボードに「+7」の表示が出ました。思わず「45分やったのに、まだ7分もやるの?」と声が出そうになりました。さらに後半には「+8」の表示。前後半合わせて15分も追加されている計算になります。
言われてみれば、その試合では選手が倒れて治療を受ける場面があり、VARによる確認も1回入っていました。「たぶんこのあたりが理由なんだろうな」とは推測できたのですが、実際に何がどれくらい加算されているのかまでは、正直よくわかっていませんでした。
そこで改めて調べてみたところ、近年アディショナルタイムが長くなっているのには、はっきりとした理由がありました。この記事では、アディショナルタイムの仕組みや、なぜ最近こんなに長くなっているのかを、試合中でもサッと読める形でまとめています。
Q. アディショナルタイムって何のための時間?
アディショナルタイムは、英語で「Additional Time」と書き、日本語に訳すと「追加時間」という意味になります。「AT」と略して表記されることも多いです。
サッカーの試合では、選手交代や負傷者の治療でプレーが止まっても、時計そのものは止まりません。バスケットボールやフットサルのように、プレーが止まるたびに時計も止まるタイムキーパー制とは違うんです。そのため、試合中に「無駄に使われてしまった時間」が積み重なると、そのぶん実際にプレーしている時間が短くなってしまいます。
そこで、中断によって失われた時間を後から補い、しっかり45分間プレーできるようにするために設けられているのがアディショナルタイムです。「延長でおまけの時間をあげている」のではなく、「本来あるはずだった45分を取り戻している」時間、と考えるとわかりやすいと思います。
ちなみに、以前は「ロスタイム」と呼ばれていましたが、これは日本でしか使われていなかった和製英語です。「失われた時間」という表現にネガティブな印象があることや、国際基準に合わせる目的から、Jリーグでは2010年7月にFIFAの表記に合わせて「アディショナルタイム」に統一されました。
Q. 何が時間としてカウントされているの?
では、どんな時間が追加されるのでしょうか。一言で言うと、「ボールを使って遊べなかった時間」です。試合の中で、ボールが動いていない時間がいろいろありますよね。その分を後で返してもらう、というイメージです。
追加される時間には、例えばこんなものがあります。
- 選手が交代するとき、コートを出たり入ったりしている時間
- 選手がケガをして、皆で駆け寄ったり、手当てをしていた時間
- 審判がカードを出して、注意をしていた時間
- VAR(ビデオで判定を確認する仕組み)で、映像を見ていた時間
- ゴールが決まった後、皆で喜んでいた時間
- 暑い日に、水を飲むために試合を止めていた時間
自分が観ていた試合でも、選手がケガをして手当てをしていた場面と、VARで映像を確認していた場面がありました。どちらもこのリストにそのまま入っています。VARは1回入るだけで数分かかることもあるので、そこにケガの手当てや交代の時間が重なれば、7分や8分になるのも納得できます。
一方で、スローインやゴールキックの準備のような、試合の中で普通に起きる短い止まり方は、追加されません。あくまで「本当ならプレーできたはずなのに、別のことで使われてしまった時間」を返してもらうための仕組み、というわけです。
Q. 誰が、どうやって決めているの?
アディショナルタイムを決めているのは、ピッチの中にいる主審です。試合中、主審は中断があるたびにその時間を記録していて、前半や後半が終わりに近づくと、それまでに積み重なった時間をもとに「あと何分追加するか」を判断します。
そして、その数字を実際に観客に見せる役目を担っているのが、ピッチの外にいる第4の審判です。主審から合図を受けた第4の審判が、電光掲示板に「+7」のように表示して、選手にも観客にも「あと何分あるか」が伝わるようになっています。
ここで一つ知っておくと面白いのが、表示された時間は「最低でもこれだけはやりますよ」という数字だという点です。表示された後に、さらに選手交代や負傷による中断が起きれば、その分だけ試合はさらに延びることがあります。「+7と出ていたのに、7分過ぎても終わらない」ということが起きるのは、このためです。
ちなみに、このアディショナルタイムの表示が始まったのは1998年のことです。それ以前は主審だけが時間を把握していて、選手も観客も「あと何分あるのか」がまったくわからない状態で試合を見ていました。今のように数字が見えるだけでも、かなり親切になったと言えそうですね。
Q. 最近長くなっている気がするのはなぜ?
「昔はアディショナルタイムって2〜3分くらいだった気がする」と感じている人も多いと思います。実はその感覚は正しくて、ここ数年でアディショナルタイムははっきり長くなっています。
大きなきっかけとして知られているのが、2022年のカタールワールドカップです。
大会前に、FIFAの審判のトップが「ケガや時間の浪費、ゴール後の喜びなど、試合が止まっていた時間はその分しっかり補う」という方針を示し、審判たちが止まっていた時間を細かく計って追加するようになりました。実際、イングランド対イランの試合では前半14分、後半10分という表示が出て、大きな話題になりました。
ちなみに、この「正確に計る」という考え方自体は、その前の2018年ロシア大会から少しずつ始まっていたそうです。カタール大会でそれが徹底され、多くの人が「最近長くなった」と気づくきっかけになった、というのが正確なところです。その後、この考え方は各国のリーグにも広がり、後半のアディショナルタイムが10分を超える試合も珍しくなくなりました。
それに加えて、VARの導入そのものも影響しています。VARのおかげで大事な判定の間違いは減りましたが、その分、映像を確認するために試合が止まる時間は増えました。自分が観た試合で前半7分・後半8分になったのも、まさにこの流れの中にある試合だったと言えそうです。
さらに、2026年の北中米ワールドカップでは、暑さ対策として前半・後半それぞれの途中に給水のための休憩が設けられ、その時間もアディショナルタイムに加えられました。こうした新しいルールが加わることで、表示される時間は以前より長めになる傾向があります。
ただ、長くなりすぎることへの対策も始まっています。北中米ワールドカップでは、選手交代などに秒数の制限を設けて、そもそも試合が止まる時間を減らそうという新しいルールも導入されました。アディショナルタイムのルールは、これからも少しずつ変わっていくのかもしれませんね。

調べてみて納得したこと
あの試合で「+7」「+8」の表示を見たとき、正直なところ「さすがに長すぎない?」と思っていました。でも、ここまで調べてみて、その印象はだいぶ変わりました。
一番大きかったのは、アディショナルタイムが「おまけの時間」ではなく、「本当ならプレーできたはずの時間を返してもらうための時間」だとわかったことです。あの試合では、選手がケガで倒れて手当てを受けていた時間があり、VARで映像を確認していた時間もありました。その間、ボールはまったく動いていません。そう考えると、7分や8分という数字は、むしろ「ちゃんと45分間プレーさせるために必要な時間」だったんだと思えるようになりました。
もう一つ納得したのは、長くなっているのには、はっきりした理由があるということです。昔の試合と比べて長く感じるのは、審判が止まっていた時間をより正確に計るようになったからで、試合がダラダラしているわけではありませんでした。むしろ、リードしているチームが時間稼ぎをしても、その分きっちり時間が戻ってくる仕組みになっているので、最後まで勝負がわからない、公平な試合になっているとも言えます。
「長すぎる」と感じていた数分間が、仕組みを知ったことで「最後まで何が起きるかわからない、ドキドキできる時間」に変わった。それが、今回調べてみて一番の収穫でした。
まとめ:次に長い表示が出ても慌てない
アディショナルタイムは「おまけ」ではなく、試合が止まっていた時間を「返してもらう」ための時間です。最近長くなっているのは、その時間を以前より正確に計るようになったから。この2つだけ覚えておけば十分です。
次に「+7」や「+8」の表示が出たら、慌てずに「今日はケガやVARで止まる時間が長かったな」と思い出してみてください。長いと感じていた数分間が、最後まで目が離せないドキドキの時間に変わるはずです。
